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幻の結婚記念日

 一年前の日記にも書いたが、今から十五年前の十月十日、私は結婚するはずだった。
 それが急に破談になり、予約していた結婚式場をキャンセルしに出向いた。式場の受付には、多くのカップルが予約に来ていた。それらを掻き分け掻き分け前に行き、
「こないだの予約、キャンセルします。白紙に戻してください」
 と係員に言った。
 多くの幸せそうなカップルたちの前で恥ずかしかったが、半面、少しだけ誇らしくもあった。
 なぜなら、カップルたちの女性はともかく、男たちのニ、三割は幸せそうな顔をしておらず、破談になった私を羨む目で見ていたからだ(勘違いかも知れぬが)。
 私には、男たちがこのように考えているように思えた。
「いいなあ、キャンセルかあ。おれも出来ればそうしたい。出来ちゃった婚で逃げられなかったものなあ」
「これでいいのかなあ。この女と一生暮らすことになるが、本当はもっと良い女に出会えるんじゃないのかなあ」
「どうして結婚なんてする羽目になっちまったんだ。まだまだ自由にやりたかったのになあ。とにかく、俺もこれでおしまいだあ」
 それらの心の呟きが、負け惜しみでなく手に取るように分かったものだった。
 とにかく私はキャンセルしてスッキリし(キャンセル料はふんだくられたが)、そこにいるカップルの誰よりも晴れやかな表情になった。そして連中に一言、言いたかった。
「本当に、それで良いのかね?」と。
 とにかくキャンセルしたため、私は幸せな日々を送ることが出来ている。
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かげろう102

Author:かげろう102
官能作家、睦月影郎のブログ2です。

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